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研究発表のときに参加者のみなさんからいただいた質問を抜粋して紹介します!
1)伊豆諸島御蔵島周辺にくらす野生ミナミハンドウイルカの摂餌行動について
発表者:高橋力也(近大)
御蔵島のミナミハンドウイルカの摂餌生態について紹介してもらいました.
日中の摂餌行動は目視観察などが可能ですが,夜間については観察が難しいです.
今後の音をつかった調査の可能性について,司会者から1つ質問させていただきました.
質問|摂餌(せつじ)行動を調べるために音をつかって調査を行う,ということでしたが,イルカは餌を食べるときに音を出しているのですか?
高橋さんは,イルカが餌を探すときの音について教えてくれました.
第2部のおもしろ情報では,具体的なデータを示して,イルカの摂餌だと考えられる音のパターンを紹介してくれました.
御蔵島のミナミハンドウイルカたちは夜に餌を食べている様子,とのことなので,目視調査以外の方法で新しい発見がされるのが待ち遠しいですね!
2)アマゾンマナティーの赤ちゃんは特別な鳴き声を理解しているのか
発表者:菊池夢美(京大野生研 / マナティー研究所)
アマゾンマナティーの赤ちゃんが特定のマナティーの鳴き声に反応して鳴き返すかどうかを調べるため,水中で音を聞かせるプレイバック(再生)実験を行いました.
プレイバック実験でつかったのは6種類の音で,その中にはいっしょに水槽ですごしているマナティーの鳴き声の『基本周波数』が含まれていました.
質問|基本周波数は人間の耳に聞こえる可聴域なのでしょうか?
はい,可聴域の音です.
マナティーの鳴き声は人間の耳に聞こえる可聴域で,いくつかの周波数からなるハーモニクス音です.その周波数の中の一番低いものが基本周波数として定義されています.
質問|大人になるとアマゾンマナティーは鳴かないということでしたが,子供のときは鳴き声をどうやって使ってコミュ二ケーションをとるのでしょうか?
アマゾンマナティーは母子で一緒に数年間をすごすので,お母さんと子供の間での鳴き交わしがお互いいっしょにいるための大切なコミュニケーションになっています.
しかし,保護したマナティーを再びアマゾン川へ放流した際,大人のマナティーに装着した録音機で鳴き声が記録されていました.そのため,飼育環境では鳴かない,野生では鳴き声を使っている,という可能性もあります
3)ジュゴンはなぜ鳴くのか?チャープ音の役割り
発表者:市川光太郎(京大)*スカイプでの発表
ジュゴンがよく使う鳴き声は「トリル」や「チャープ」と呼ばれる声です.
今回は,野生のジュゴンの鳴き返しについて「チャープ」に注目して調べた内容を発表してもらいました.
質問|ジュゴンの鳴き声の『チャープ』の形状が国によって違っていましたが,それは方言のようなものでしょうか?
とても鋭い質問をいただきありがとうございます.
今まさに,学生がその研究に取り組んでいて,各国のジュゴンのチャープ形状を比較した研究をしています.
いまのところ国ごとに違いそうですが,全く違うわけではなく,レパートリーはある程度共有されているようです.
4)飼育カマイルカのコンタクトコールについて
発表者:三島由夏(海洋大)
コンタクトコールとは,群れのつながりを維持するために鳴き交わす音のことです.
カマイルカは1秒以内に『3つ以上のつながりパルス』を鳴き交わすことから,これがカマイルカのコンタクトコールだと考えられました.
質問|コンタクトコールについて,グループと個体のIDの区別についてはこれから調べるということですが,水族館の個体を対象にどういった観点で調べるのでしょうか?
実はすでにパターン分けなどを解析して,いきづまっています.
個体特有なのかグループ特有なのか,飼育下では調べるのが難しいところがあります.
いまは音声発達を調べていて,親と似るのか,それとも周りの個体からパターンを学習しているのかなどを見つつ,野外のデータ取得も目指しています.
次回はおもしろ情報の内容を紹介します!
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